神と不毛 SS 2009年05月10日 「私は、人生が楽しくない。」 なぜそう思うのだ。 「私は、人一倍働いているし、他者への配慮も忘れていない。 だが満たされぬのだ。」 なぜ満たされぬのだ。 「私より努力していない者たちが、私よりも満たされた生活を おくって日々を暮らしている。それが私には疑問に感じるのだ。」 お前の考えが、神である私にはわからぬ。 「なぜわからぬ。それでも神か。」 神である私には人々の努力など些細なこと。 目に見えぬ虫が呼吸するように些細なこと。 「なんということだ、私は理解されていないのか。 神であるお前にすらも。」 他者が『理解したという事実』は、口にしない限りお前には伝わらぬ。 例え口にしたとしてもその事実が事実であるということはお前にはわからぬ。 「もはや貴様に関わるゆとりは私には残っていない。」 「貴様のおかげで再認識できた。」 「私のことは誰にもわからぬ。」 「自分のことを理解できるのは自分だけだ。」 なにをする 「私はお前を殴りつづける」 やめるのだ 「口で言ってもわからぬことは拳で語るのだ。」 それでも私には理解できないのだろう。 「ならばそのまま朽ちて逝くが良い」 こうして神はこの世を去り、新たな神が誕生した。 新たな神は知恵を持たず、言葉を知らぬ。 拳を振りかざした故に起こる事象こそが、唯一神の意思であった。 人々は恐れた。畏怖を込めて神の意思をこう呼んだ そう “ジャイアニズム”と 完 PR